NATO軍による空爆開始により、平和的解決とはほど遠い方向へと一気に進んでしまったユーゴ情勢。一方国内でも、ガイドライン関連法案の審議が頂点を迎えつつあります。国内外に緊迫した状況が続く中、ユーゴ情勢の裏側に隠された争いの真実について、また日本が国際社会において今後進むべき方向性について、マスコミでは報じられない正しい情報をより多くの方々にお伝えしたいという思いから、《中丸薫のワールドレポートVol.8》の内容を特別に公開することにいたしました。

* 中丸薫のワールドレポートは毎月一日に発行されます。

《中丸薫のWORLD REPORT》Vol.8 1999年6月号 INDEX
◆国際情勢◆『米政府を牛耳るゴア副大統領』
NATO軍によるユーゴ空爆の裏では、誰が動いているのか…。多くの市民を巻き込んだ悲惨な闘争の裏側にある、真の主役とは…?
中国大使館への誤爆と、日米ガイドラインのゆくへ。
◆トピックス◆『ベクテルがしかけるユーゴ復興プラン』
すでに始まっているユーゴ復興プランと、米国ベクトル社の関係。
◆交友録◆『エドモンド・ロスチャイルド』
大富豪という名声をほしいままにしてきたロスチャイルド。彼とのインタビューで垣間見た、人生の珠玉の瞬間とは…?



◆国際情勢◆
『米政府を牛耳るゴア副大統領』  

ユーゴ空爆を機に、主要先進国の政治力学がターニングポイントを迎えようとしている。この動きを強力におしすすめているのが、米国のゴア副大統領であり、オルブライト国務長官である。この二人は今、米国を動かし国際政治の構図を意のままに動かそうともくろむ闇の権力の忠実な下僕としてもっともめざましい活躍をしている。ご用 済みとなったクリントン大統領にはもはや操り人形として発言する役割しか与えられていない。
 そもそもユーゴ空爆開始のキャスティングボードを握っていたのはゴア副大統領だった。空爆の最終決定が下されようとしていたとき、ロシアのプリマコフ首相はIMFよる対ロシア融資実施問題についての協議をIMF首脳と行う為に、専用機でワシントンに向かっているところだった。その時、すでにミロシェビッチ大統領とホルブルック特使との交渉は決裂していたが、プリマコフ首相は予定通り訪米の途についていた。しかしプリマコフ首相は大西洋上で急きょ訪米中止を決め、モスクワに帰ってしまった。その理由を「ゴア副大統領から電話があり、自分の米国滞在中に空爆が行われるのは必至と聞いたから」と答えている。
 だがクリントン大統領はこの段階では空爆開始の最終決定はしていない。プリマコフ首相が米国にいる間は空爆を開始しないというのが訪米の条件でもあったし、コソボ問題の難局を乗り切るためにクリントン大統領自信が会談を強く望んでいたからである
 だが会談は実現しなかった。それどころか大統領の頭越しに「空爆決定」が伝えられていたのだ。大西洋上のプリマコフ首相に電話 をかけた理由をゴア副大統領は「情報を伝えるため」と話しているが、モスクワについた首相は大西洋上のゴア副大統領からの電話は2度目の電話であり、そのなかで空爆決定を明言したことを話している。このやりとりが行われているころ、クリントン大統領は国家安全保障チームをはじめとした会議、演説に追われ、ほぼ拘束状態だったという。
 クリントン大統領とプリマコフ首相の会談が中止になったのはこれが初めてではなかった。昨年十一月、両者は会談を約束していた。ちょうどマレーシアでのアジア太平洋経済協力フォーラムのころのことである。このとき大統領はその大事な国際会議よりもプリマコフとの会談を選ぶ熱の入れようだったが、ゴア副大統領とそのブレーンが引き起こしたイラク危機と重なり、会談は幻と消えた。一方のゴア副大統領は、アジア太平洋経済協力フォーラムでマレーシアのマハティール首相を非難し、アジア諸国と中国の反感を招いた。
 こうしてみると、一時期好転しつつあるようにみえた米ロ関係がこの数カ月の間に急速に悪化していることがわかる。同じく、米中関係も在ユーゴスラビア中国大使館の誤爆問題を機に急速に悪化している。


◇中国誤爆は確信犯

中国大使館への攻撃は誤爆などではない。中国包囲網を狙った闇の権力による計画的な犯行である。中国は空爆に否定的な態度を示し、国連の常任理事国として拒否権を発動することも辞さない構えだった。その中国に対するあからさまな揺さぶりがあの攻撃だったのだ。それより一足早く、中国国内では気功の全国的な新興集団である「法輪功」の群衆二万人が北京に結集して政府に抗議の座り込みを行うという事件が四月下旬に起きた。創始者の李洪志という人物は現在ニューヨークに在住し、この教祖の元に中国政府の役人や軍人までもが集まっているという。カルト性を帯びたこの集団が中国国内で の政情不安を引き起こしつつあることに政府は警戒を強めているが、これだけの勢力に発展するために必要なマンパワー、資金を考えると、中国への揺さぶりを狙う闇の権力の手先が蜂起に一役買っていると思われる。意図に従わない国を内外から揺さぶるのは闇の権力の常套手段である。
 そうした米国と中国の関係悪化と時を同じくして日本では日米ガイドライン関連法案が国会を通過した。これで闇の権力による中国包囲網は一つのかたちとして結実したことになる。
 くり返すように、日米ガイドラインでは日本の統帥権についてはまったく触れられていない。マスコミにも取り上げられていない。だが、統帥権のない自衛などあり得ない。今回のガイドライン関連法案は、事実上米国による日本の合法的占領権を与えることとなった。米国がアジアに宣戦布告した戦争に、日本が防波堤として美しい国土や人命を提供するかも知れない事態が現実的なものとなってきたのである。それは今のイタリアをみれば理解できる。
 現在、NATO軍機の大半はイタリア基地内を拠点にしてユーゴを空爆している。アドリア海をはさんでユーゴと向き合うイタリアは攻撃拠点として最高の条件を備えているのである。だがイタリアは日本同様、戦争放棄をうたう憲法をもっているため、戦闘行為への直接参加はせず、その支援は「後方」に限定するという条件付きでNATO軍に参加した。
 ところが空爆が始まってからどんなことがおこったか。まず民間空港は閉鎖されて米軍機が離発着をくりかえし、その一部は住宅地近くに不時着し、さらには故障した米軍機の爆弾が投棄されるなど、市民の生命と安全を脅かすような事態が起こった。そればかりか本来議会の事前承認を必要とする軍隊行動が手続きを経ないで発動され、米軍爆撃機の護衛としてイタリア軍が空爆に参加、その際対空射撃に応戦して発砲した疑いが濃厚となり議会は一時紛糾した。とても「後方」支援とは言えない状況が起こったのである。結局イタリア下院は先日空爆停止の決議を採択したが、万が一ユーゴNATO軍の攻撃拠点を反撃をしてきた場合、イタリアは真っ先に攻撃目標となる。このイタリアの現状は日米ガイドラインのまやかしを私たちに教えてくれている。
 今欧州ではG8や国連を中心にして空爆を停止しようとする機運が高まっている。米国の大国主義と、その大国が主導する戦争で自分たちの国が破壊される愚を犯したくないからだ。日本も米国従属 になればなるほど、自らアジア諸国との緊張を高め、米国の戦争に巻き込まれる危険を増幅させていく愚を自覚すべきだろう。
 ユーゴは核を所有している。また国益ではなく、民族の存亡をかけて戦っている。山岳地帯も多い。そんな国を相手にもし地上戦でも始めることになれば米国はベトナムの悲劇をくり返すことになるであろう。ミロシェビッチ大統領は捕虜の解放、コソボからのユーゴ軍の一部撤退を表明したが、空爆は続けられている。このまま破 壊行為を続ければ、米国、ロシア、中国の関係悪化、欧州諸国の分 裂など、まるで第三次世界大戦の様相を呈しかねない。
 実際闇の権力が狙っているのは、戦争で米ロ両国の国力を衰退させ、自分たちの秩序に則って世界を再編していくことにある。彼らの行動指針はAll or Nothing。海の向こうのできごとを自分のこととして考える知恵が私たちには必要であろう。


◆トピックス◆
『ベクテルがしかけるユーゴ復興プラン』

ユーゴ空爆が続くなか、一部のエスタブリッシュメントの間では早くもユーゴの復興プランがささやかれている。日本がかつてマーシャルプランで国土再建への道を歩んだように、戦後の復興はビッグビジネスとして特需が期待される。戦後の焦土には道路、港湾、空港を 始めとしたインフラの整備にともない、土木・建設事業、産業復興事業などいたるところにビッグプロジェクトが発生する。
 そんなときいつも名前が上がるのが、米国のベクテル社である。 総合エンジニアリング業の看板を掲げてはいるが、実態はCIAご用達のゼネコンである。ブッシュ大統領がこの会社の社長を務めていたことは以前にも書いたが、そのほかにも社長がシュルツ、副社長 がワインバーガーという時代もあった。いうまでもなく二人はレーガン政権を支えた国務長官と国防長官である。以前私がクエートのアブダビ国王と面会をしていて戦後復興に話が及んだとき、国王からもこの会社の名前が上がった。
 一見日本とは何の関係もなさそうなこの会社は以外にも私たちの社会にもどっぷりと根を下ろしている。今ベクテルが商売相手として期待を寄せているのが今後十年間の日本の公共事業なのである。 鳴り物入りでオープンした関西国際空港の近未来的な建築物には、 施工主のなかに竹中、大林、大成、住友といった日本のおなじみのゼネコンに混ざって、唯一の外資系としてベクテルの名前がみてとれる。ベクテルは三井物産、丸紅、伊藤忠などとは特に親密な関係にあり、日本への影響力は今後ますます大きくなることと思われる。 豊富な資金とロビー活動で世界を駆けめぐるベクテルは破壊と再生のなかで安定的な実績を積んでいる。
 何しろあのスリーマイル島の原子炉建設もベクテルが手がけたといえば、その実態がわかるというものであろう。その原発事故のときの社長がシュルツ、副社長がワインバーガーであった。彼らと当時のカーター大統領が、スリーマイル島の事故をうまく収拾したばかりか、当時原発建設の契約を取り付けていた韓国に莫大なわいろを送ったことが知られている。談合ビジネスの輪にしっかりとベクテルが入り込んでいることは日本人として覚えておいてもいいだろ う。
 それにしても一般庶民として生きている私は彼らの金銭や名誉への執着は理解できない。墓場には何ももっていくことができない。 宝は心に積むべきだと私などは思うのだが、一体何が彼らを駆り立てるのだろう。

 今、竹下登元首相の重病説や死亡説がまことしやかにささやかれているが、一国の首相を務めた人物の病名も、入院先も、病状もわからないというのは政情安定国としては異常な事態である。お役ごめんで葬られたのでは、と推測されてもいたしかたのないことである。
 竹下氏は闇の権力から特命を受けて、日本の政治を裏で牛耳る存在として長い間暗躍した。彼の盆暮れの付け届けは百万円単位だったと友人のジャーナリストが話していたが、いたるところに金をばらまき、プロパガンダを先導していく様は徹底していたようだ。それだけの潤沢な金が彼のところへ流れ込んできていたのである。今 その役目は次の人間に引き継がれている。
 私たちは本来光そのものの存在である。私たちは生き通しの魂として、生きて霊になるのではなく今も霊として存在しているのである。そのことが理解できなければ本当の幸せは訪れないと思っている私にとって竹下氏のような生き方は気の毒としかいいようがない。破壊を垂れ流す人々の人生の目的もあわれである。金、名誉、権力 といった移ろいやすいものに人生を求めても決して心に安らぎは訪れない。移ろうものはいつか離れていくのである。私たちは肉体の死を迎えた時、光となって天上の世界へ帰っていく。そのとき持っていけるのは愛と慈悲の心で人生を生きたかどうかという事実だけ である。
 金や名誉や権力は天上の世界では何の役にも立たない。もてる人は、少しでも多くの人が幸せになれる方法でそれらを有効活用することである。心に光をためるとはそのようなことなのだ。
 私自身は霊的体験をしてから余計なものを手放す生き方を選んだ。すると不思議なことに手放せば手放すほど多くのものが私の元へ入っ てくることに気がついた。家族や友人との絆、心の安らぎ、知恵、直観、人として生きるうえでもっとも大切で、幸せを感じることが できるものをたくさん天から授かるようになったばかりか、思った ことが実現する人生を歩めるようになった。人々が自分の良心に神を感じ、霊性に目覚め、心の扉を開くことの大切さは声を大にして 言いたい。
 私たちは今生で選んだ職業、親兄弟、結婚相手、友人のなかでそ れぞれが自分の魂の成長に合った修業につとめ、霊性を向上させていく。決して現実の生活をおろそかにしてはいけない。つらくても逃げてはいけない。逃げれば逃げるほど、魂が気づくまで苦しみは 追いかけてくる。人生に逃げ場はない。誰も代わりにあなたの人生を生きてはくれないのである。私たちを見守ってくれている存在を 信じて、自分の心を静かにみつめる時間をつくり、自分の人生の心 の主人となって生きよう。


◆交友録◆ エドモンド・ロスチャイルド
彼に会った頃、日本では田中角栄が首相に就任して話題になっていた。      「人間の価値はその人が何を考え、何をしようとしているかで決まる。生まれや出身校ではないんだ。」生まれたときからロスチャイルド家の当主を定められていた彼にとって『今太閤』と騒がれていた田中角栄の天衣無縫な生き方は憧れでさえあった。当時彼はシェル石油の会長職を退き、英ヒース首相の命によりシンクタンクを任されていた。
  「家なんて体を横たえる所があれば十分だ。邸宅?持っていても荷が重い。政府に任せた方が賢明だよ」27冊の美術書にもなっているロスチャイルド家の邸宅や財宝も、彼の心のよりどころには決してなりえないようだった。            人生で最も感動的だった瞬間は、ヒットラーが自殺し、服毒自殺に備えて持っていたモルヒネのカプセルをトイレに流したとき、と答えた彼を前にして、私は初めてユダヤ人というものをはっきりと意識した。ユダヤとは何なのか。国籍なのか民族なのか宗教なのか。
  それから後、世界各国をまわるうちに闇の権力が厳然として存在することを確信するに至った私は、その代名詞としてロスチャイルドの名が上がってくることにいまひとつ腑に落ちないものを感じていた。「本当の黒幕は他にいるのではないか。」
  ある日彼は私を自宅に招いてくれた。自らモーツァルトや ショパンを奏でた彼は、自分が実はちょっとした科学者で、ケンブリッジ大学には自分の開発した計器が今も残っている ことを嬉々として話してくれた。それはまるで、ロスチャイルドではない、自分自身の純粋なアイデンティティを主張しているかのようだった。
  あれから長い時が流れた。昨年彼から届いた手紙には、病身をおしてペンを走らせたであろう頼りなげなサインが記さ れていた。操り人形になることを拒んで自殺したとされる息子、世界の富の半分を所有したと言われる財産。激動の人生を生きてきた彼の目には一体今何が映っているのだろう。
  いつか再び彼に会う日、輪廻転生の話が彼の心を光に解き放してくれることを信じている。

 


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