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マスコミでは報じられない正しい情報をより多くの方々にお伝えしたいという思いから、 《中丸薫のワールドレポートVol.70》の内容を特別に公開することにいたしました。 * 中丸薫のワールドレポートは毎月一日に発行されます。 |
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◆国際情勢◆
『米国で広がる「反ネオコン」』
イラク暫定政権はアメリカの傀儡
六月二八日、イラクを占領統治してきた連合国暫定当局(CPA)が、予定より二日早くイラクに主権を移譲した。しかし、主権を移譲されたイラク暫定政権は、米軍の力を借りて抵抗勢力を武力で鎮圧する方針を打ち出し、イラク国内外から「結局はアメリカの傀儡政権」と揶揄されている。
「主権移譲」は、本来なら六月三〇日に華々しく執り行われるはずだった。しかし、イラク国内の治安情勢がそれを許さなかった。人の国に土足で入り込み、さんざん荒らしたあげく、万策尽きて体のいい「主権移譲」を強行したアメリカの無責任な態度は、七月以降、武装勢力のテロや抵抗運動を一層たきつける結果となった。イスラム教シーア派の急進的反米指導者サドル師は、当初暫定政府への協力を表明していたが、一転。「われわれは血の最後の一滴まで占領への抵抗を続ける」とする声明を出し、暫定政権と対立している。同師には聖職者殺害の罪でCPAから逮捕状が出ていたが、暫定政権が「組織を解体するならば罪を放免する」という方針を打ち出したことに猛反発し、徹底抗戦の構えを見せているのである。
サダム・フセイン支持者の多いスンニ派居住区(いわゆる「スンニ三角地帯」)では、フセイン裁判に反発する住民らのデモが行われ、デモ隊がロケット弾などを掲げて「われわれはサダムに命を捧げる」と声を荒げる光景が見られた。また、バクダッドの中心街では、ロケット弾の攻撃を受けて暫定政権の財務省金融監督局長が死亡し、ファルージャではイスラム過激派のザルカウィ容疑者が率いる武装集団の隠れ家とされる民家が米軍によって攻撃され、イラク人五人が死亡するなど、反米武装勢力と米軍との衝突は後を絶たない。
こうした事態に対して、暫定政府は「非常事態宣言」を発し、武装勢力を制圧しようとしている。しかし、その実行部隊は米軍であり、暫定政権がアメリカの傀儡政権であることは明白である。しかも暫定政権は、自らも武装集団を雇って、反体制派を武力攻撃しようとしている。関係筋には「暫定政権に秘密警察が創設されたのでは」と見る向きもあり、これのどこが「民主化」なのか、旧フセイン政権時代の恐怖政治とどこが違うのか、という声がアラブ諸国からやヨーロッパ諸国からあがっている。
『米国内でも高まるネオコン批判』
イラク暫定政権を後で操るアメリカは、各国の兵士と軍資金をあてにして占領統治を強化し、イラクの国土や石油を完全に手中におさめたいところである。だが、主権移譲と同じ日に行われたNATO首脳会議で、ブッシュは独仏との関係を修復することができず、結局、NATO軍を多国籍軍としてイラク復興に参加させる、という約束を取り付けることはできなかった。各国はアメリカの欺瞞性を見抜き、アメリカと一歩距離を置く姿勢をあくまで崩していないのである。ブッシュと会談した際、国民に一言の説明もなく、いきなり「多国籍軍に参加する」と述べ、国会に事後承認させた小泉首相とは何という違いであろうか。
アメリカへの不信は、アメリカ国内でもじわじわと広がっている。アメリカでは今、米軍兵士の質の低下、士気の低下が深刻な問題になっている。米軍が委託した調査機関の報告によれば、新兵の約三分の一に逮捕暦があるという。これでは、兵士に「倫理観を持て」と言っても無理な話である。さらに深刻なのは、戦闘の現場を担う中堅の士官、下士官が大量に軍を去っていることである。士官がいなければ軍は機能しない。彼らが軍を後にする背景には、アフガン、イラク両戦争において、ネオコンを中心とした文官たちが、イスラエルの掲げる「大イスラエル主義」のために、大義なき戦争に突っ走ったことへの反発がある。イラクだけでも、すでに兵士の死者は一〇〇〇人超。命をかけて現場をあずかる制服組にとって、自分たちの意見に耳を貸そうともせず、イスラエルを利する政策ばかりを打ち出すネオコンは、私利私欲にまみれた売国奴以外のなにものでもない。制服組の離脱は、イスラエルのために兵士の命を無益に戦場に散らすネオコンと、それに引きずり回されるブッシュ政権への不満が頂点に達したためといっていい。
軍内部だけでなく、大手メディアからもネオコン批判が噴出している。米CNNは、イラク国内の刑務所などを統括していた米軍責任者が、「バグダッドの施設で、身元不明のイスラエル人が尋問者として活動していた」と話したことを報じた。また、イギリスBBCも、「イスラエルの最高裁判所が同国の情報機関に対して、イラク人への尋問の際、暴力の行使を容認していた」と報じた。さらに、アブグレイブ刑務所の虐殺を報じた米ジャーナリストも、「イスラエルの工作員がイラク国内で活動している」と述べている。ブッシュがネオコンと距離を置き始めたのを見て、大手メディアもこれまで封印していたネオコン批判、イスラエル批判を解禁し、「アメリカの国益とは何か」を論じ始めたのである。
CNNの世論調査によれば、治安が安定していない現段階でのイラクへの「主権移譲」に対して、国民の六割が「イラク政策の失敗」と回答している。さらに、今後の治安改善の見通しについても、七割が「米軍はダラダラとした駐留を余儀なくされる」と悲観的な回答をしている。自国がネオコンに寄生され、斜陽の一途をたどっていることに、米国民は危機感を募らせている。そのような国に、忠実な「同盟国」として追随する日本は、明らかに国際社会から浮いている。アメリカは、現在世界規模での米軍再編を検討しており、在日米軍を見直し、中国や朝鮮半島へのにらみを一層きかせる戦略を打ち出している。アメリカの、そしてネオコンのための戦争の駒として、山紫水明と詠われた美しい日本が利用されていることを、私たちは自覚しなければならない。
先日、経団連が「武器輸出三原則」を見直すよう、政府に提言した。このまま三原則を守り続ければ、日本経済の活力も、技術力も、世界から取り残されるというのである。しかし、日本は平和憲法の精神にのっとり、殺戮に手を貸すようなことは絶対にしてはならない。仏教では命あるものを殺傷することはもちろん、そのような道具を作ることも「地獄行き」として厳しく諌めている。日本がすべきことは、八正道を実践し、アメリカのよき友人として適切な助言をすることである。日本もアメリカも、国民はまともな判断力を持っている。ぜひとも、草の根で光のネットワークを広げていこうではありませんか。
◆トピックス◆
『宇宙創造神の意志を引き継ぐ「万世一系」』一昨年一〇月、ドラマを見ているようなできごとがあった。本紙を読んでくださっている方ならよくご存知だと思うが、私の父は伊藤博文(初代総理大臣)、頭山満(「アジアはひとつ」を唱え、自由民権運動を推進した「玄洋社」総裁)らによって、「中国の父」孫文に紹介され、中国に渡って孫文の右腕として命がけで孫文革命を支えた。父は中国に渡ったとき、中国に骨を埋める覚悟だったのだろうか。明治天皇からいただいた鎧兜(よろいかぶと)などが入った二四箱の長持を側近の女性に預けていた。その女性がずっと私を探し続けていたと言い、何十年かぶりに再会したのである。女性は一〇〇歳という高齢にもかかわらずお元気で、父から「この長持はいずれすべて薫に渡して欲しい」と言われ、ずっと気にかかっていたという。そして、その中に納められた鎧は、「弾が飛んできても弾のほうがよける」と言われるほど不思議な力を持っている、と教えてくれた。彼女は私が五歳の頃、よく私の手をひいて紫禁城の中を散歩してくれたものだった。劇的な再会に彼女も私も胸を熱くした。
この一件で、私は中国や朝鮮半島など、大陸との縁(えにし)に改めて思いを馳せるようになった。コロンビア大学院時代には中国語を使ってリサーチをし、論文を書いたこともある。また、南北朝鮮それぞれとの親交もドラマに満ちていて、その親交が南北朝鮮の首脳会談につながったこともとても劇的だった。私にとって中国や朝鮮半島はやはりとても縁の深いところなのである。
そんな折、講演で北陸や九州など全国各地をくまなく歩き、日本の「正史」と言われるものが真実そのものではないことを感じ始めた。富山や新潟はその昔日本の表玄関だったと言われている。また、広島や九州などには「奴国の王」などと書かれた鳥居や、巨石の大神殿の跡などが多数残っている。それらは明らかに「古事記」や「日本書紀」には書かれていない、ずっと昔のものである。さらに、「太陽の会」の皆さんからも「ぜひ一度日本の正史に触れてください。どうも理解できないことが多いものですから」と言われていた。
私自身も、一度中国や朝鮮半島の文献から、日本と日本をとりまく諸国との関係を、聖徳太子の時代を中心に調べてみたいと思っていたので、昨年はそれを徹底的に調べてみた。そこで明らかになったことを秋に著作として出版するので、詳細はそちらを読んでいただきたいのだが、リサーチを通じて私は「万世一系とは、宇宙創造神の意志を霊脈として受け継ぐこと」と確信した。
七世紀前後、日本列島をとりまく情勢は今の日本とよく似ていた。当時「力の道」を強引に推し進めていた大国・隋に相当するのが、現在のアメリカである。だが、「力の道」では日本にも世界にも平和は訪れない。そのことを理解し、日本国民に変わることを促したのは聖徳太子であった。聖徳太子は「一七条憲法」と「八正道」を通じて、人々に「和」を訴えた。それは、まさに日本の皇祖先であるアマテラスの意思を引き継いだものである。アマテラスは宇宙創造神の志を受けて遣わされた人であり、「万世一系」とはその志を霊脈として受け継いでいく道にほかならない。日本人は、精神的に王道を歩む者として立ち上がり、志を同じくする世界の人々と手を取り合い、真の世界平和を築くことを使命とする霊脈を、太古の昔から受け継いでいるのである。
太子の墓前で深くそのことを刻印したとき、太子が感謝の心として、天使が羽を広げたような、繊細で美しい虹を空にあらわしてくださったことは以前にも書いた。二一世紀、日本が、そして人類がめざすべきは調和であり、友愛を基本とした国際協調の精神であろう。そのような世界を築くためにも、まず一人一人の自立と個の確立が望まれる。
なぜ今も闘争と破壊が地球上で行われているのかといえば、人類が宇宙創造神との絆を忘れてしまっているためである。人々は宗教の名のもとに戦い、正義の名のもとに殺戮を正当化している。しかし、そのようなところに神や正義があろうはずもない。私は、一九七六年に永遠の生命を体得した者として、宗教やイデオロギー、国境を越えて、人類はいつの日か調和に満たされることを確信している。皆さまにもそのことを強く確信していただきたい。いつの時代も、心に光を持った同志が立ち上がり、光のネットワークを築くことで、人々の心の闇を光で照らしてきた。皆さまとは志高く、強い信念と情熱を持って人生を謳歌する同志として、大きな光の輪をつくっていきたいと思っている。
◆交友録◆ 三船敏郎(俳優 / 一九二〇〜一九九七年) ロンドンの国立フィルムシアター。日本映画二〇本が日替わりで上映され、さながら「日本月間」の様相を呈していた。会場は連日大入り満員。そこにゲストとして姿を現した「世界のミフネ」に会場はわいた。スクリーンでの豪放磊落なイメージとは違って、実直で、丁寧な受け答えをする三船に、観客も記者もすっかり魅了された。
「映画は斜陽だなんて言われてますけど、この間BBCで放映された『七人の侍』のノーカット版はすごい視聴率で、五〇〇万人もの人が観たそうです。いい作品をつくれば、観てもらえるんですね」
カメラマンの助手に応募したつもりが、先方の手違いにより、東宝の「第一期ニューフェイス」に。面接でのふてぶてしい態度が買われ、早々と銀幕デビューを果たすと、一九五四年の黒澤明監督『七人の侍』で世界的大スターとなった。ハリウッドでは、『七人の侍』を模倣して名作『荒野の七人』がつくられたほど、そのインパクトは大きかった。
「日本人として映画に出ることを大切にしているし、海外の作品に出るときも、日本人としての意見を堂々と言わせてもらっています。他の日本人から見て恥ずかしいことはしたくないんです」
ロンドンに来る前はパリに立ち寄り、アラン・ドロンと次回作の打ち合わせをした。そのアラン・ドロンは誰よりも三船を敬愛し、自宅のミニシアターで三船の演技を研究しつくしていた。パリでも国をあげての歓待を受けた三船。日本への思いが募った。
「イギリスもフランスも、国が映画館をつくり、映画の発展のために力を入れている。日本はその点、残念ながら遅れています。映画は国際親善になるし、直接視覚に訴えるものだからもっと大事にされてもいいと思います。我々ももっとがんばらなくちゃいかんな、と思います」
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